『日本百低山』(にほんひゃくていざん)は登山家、画家、イラストレータである小林泰彦氏の著書名。2001年刊行。
日本列島の山から、「名低山」を観点に100座を選び、それぞれの山を主題としてイラストとガイドを記したものである。
2009年には、2001年版に1座を追加した日本百低山(文庫)も出版されている。
背景と小史
日本は山国であり(同時に島国でもあるが)、八百万の神を信仰する古来より生活の中に山との関わりがあった。信仰心がないといわれる今日でも、祠を見ては拝み、社を見ては拝み、自然の中に神を見出す姿が残っている。
日常の一部であり、信仰の対象ともなり得る山々を体系的にまとめる試みは、江戸時代から見られ、谷文晁が「日本名山図会」で90の山を名山として挙げていることは有名である。
文筆家であり、登山家であった深田久弥は、谷の選集には満足せず、戦前と戦後の長い期間に渡って、名山の選定にあたった。これが『日本百名山』で、後に登山ブームや「○○百名山」の多発のベースとなっている。
『日本百低山』もこの「○○百名山」の流れをくむものである。経緯としては、1979年に『山と渓谷』誌上で「低山徘徊」の連載が開始され(2007年5月号現在、「小林泰彦の百低山巡礼」として続いている)、掲載を重ねるうちに百低山選定を期すようになったという。
書名となった日本百低山が、深田久弥の日本百名山のもじりであることも明かされている(「百の低山に百の楽しみあり」も同様なのだろう)。
なお、日本百低山以前にも、低山選集をまとめた書籍が刊行されている。
低山徘徊(1984刊行、山と渓谷社) 41座を集録
低山逍遥(1987刊行、山と渓谷社) 38座を集録
選定の基準(まえがきより要約)
百低山の選定基準については、下記の通り挙げられている。
低山の定義
昔から一般ピープルの生活圏にあった山で、里山のことを指し、日帰りであるけて、特別な技術を必要とせず、人並の体力があれば、誰でも歩ける山。
名低山の条件-1
知名度が高いこと。
ローカルな里山である低山が、全国的に知られているケースは少ないが、あえて第一条件としている。
名低山の条件-2
ストーリー性があること。
歴史がある、伝説がある、詩歌の題材になっている、小説の舞台になっている、等々の条件は、人の興味をかきたてるものである。
名低山の条件-3
自分(この場合、著者の小林泰彦氏)の好きな山。←これは大事!
名低山の条件-附則
深田百名山の基準を借り、標高については、1500メートル以下とする。
日本百低山の功績は、低山という観点からの山々の選定につきる。
山や山行の良さと高さ(標高)・難易度は必ずしも比例しない。
これを証明せしめている点で本書は秀逸であり、最大の功績といえよう。
また、これから登山を志す者や、加齢・肉体的条件から難易度の高い山への山行ができない者にとっては、日本百名山や他の選集よりも、日本百低山という選集の方がはるかに有益であろう。登山人口の裾野で、確かな道標の役割を果たしている点での価値は高い。
ローカルで、散発的な出版・リスティングになりがちな低山の分野で日本百低山というしっかりとした軸が確立されている。
著者である小林泰彦氏の連載は現在も続いている。日本百名山とは異なり、生活圏にある里山や低山を対象とした低山歩きは、対象数に尽きることがない。
日本百低山はひとつのリストであり、ひとつの目標となり得るが、それ自体が最終の目的となるような選集ではない。
日本百低山の低山歩きを通して、リストにはない自分独自の「低山」をリスティングしてしていき、宝を増やしていくことも楽しみのひとつであろう。
低山のすすめ
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